Report File:2015.01
11月20日に行われた「国際交流ガイダンス」。本学にて実施されている様々な国際交流プログラムに参加した3名の学生が、プログラムに参加したきっかけやその内容、参加した感想を発表しました。
今年から海外語学研修という形で夏休みを利用して行くこともできるようになりました。2014年は上級のロンドンと中級のニューヨークの2つのコース(次年度は未定)があり、参加者は3月に単位を取得することができます。在学中に短期留学や国際交流プロジェクトなどの海外活動で単位を取得した人には、航空費や宿泊費の補助を申請する権利を得られます。
きっかけ
今年の夏休みにニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツに短期留学をしました。自分の英語のレベルは初級です。初級の人でも留学できるということを知ってもらうためにも、ここで発表することに意味があると思っています。自分の英語力は、TOEIC・TOEFLはまだ未受験で、英検は準2級です。なぜこのレベルの英語力で留学に応募したかというと、中学3年の時にオーストラリアで2週間だけホームステイをしたことがあって、初めての海外だったこともあり異文化の魅力を知り、それ以来海外に興味を持ち始めました。なかでもニューヨークに一番関心がありました。興味があるのなら英語もしっかり勉強しようと思って、書籍を買って勉強しましたが、なかなか長続きはしませんでした。行く前は語学の面でも不安でした。
現地で
自分が行ったスクール・オブ・ビジュアル・アーツは1947年にイラストレーターと漫画家によって創設された学校です。美術系では全米で最大規模で、広告学、アニメーション、漫画、コンピューター、アート、映画とビデオ、グラフィックデザイン、イラストレーション、インテリアデザイン、写真の専攻があります。授業は午前が美術鑑賞と日常会話、午後が制作でした。実際に行った制作は3Dデザインでしたが、木を切ったり、日常のものを使ったアートのような感じで、立体作品という意味での3Dデザインでした。また、グラフィックデザインの授業で、自分の名刺をコラージュで作ったり、実際にあるインテリアデザインの会社のポスター制作を行いました。シーモア・クワストという有名なグラフィックデザイナーのインタビューの機会を設けてもらったりもしました。
留学を経て
英語が話せず、ニューヨークの街から「出直して来い」と言われているような気がして、がっかりしました。自分でももう少しできているつもりだったのですが……。でも、憧れのままで行かなかったら妄想で終わってしまいますが、実際に行くことで得たものも多かったですし、肌で感じることを大事にしたいと思いました。まずは受けていなかったTOEICのテストを受けるのと、そのための勉強をしています。向こうで日本のことを聞かれても、分からないことが多かったので、自分自身でも日本のことを知ってから行きたいです。
2006年から続いている国際交流プロジェクトは、今年から条件を満たせば単位も得られることになりました。本学の専任教員が企画をし、引率も行います。国外の高等教育機関が相手であることが前提で、現地で授業を受けたり、ワークショップに参加します。地域に限らず、航空券と宿泊費の補助があります。
きっかけ
昨年の10月末から11月はじめにロンドンから少し離れたレディング大学に、国際交流プロジェクトの一環として8日間行ってきました。3年の春に就職について考え始め、自分が何をしたいのかを考えた時、文字が好きなので書体のデザインがしたいと思いました。書体デザインの道に進むにはどうしたらよいかを卒業生に聞いてまわり、アルファベットがデザインしたいのなら、外国が本場だから一度行ってみなよとアドバイスを受けました。その後、レディング大学で文字が学べること、ムサビの後藤吉郎先生がその大学を出られていることを知りました。先生に会いに行くと、ちょうど今回参加したタイポグラフィとコミュニケーションデザイン・プロジェクトがあることを教えてもらい参加を決めました。
現地で
レディング大学は美大ではなく総合大学です。その中にタイポグラフィ学科があり、そこでデジタルフォントをデザインするタイプフェイスデザイン・コースとコミュニケーションデザイン・コースの授業に参加しました。今回は視覚伝達デザイン学科の4年生が4人で参加しました。私以外の3人はタイプフェイスデザインというよりは海外で勉強をしたいという興味からでした。メインとなった課題は、オリジナルのタイプフェイスデザインを作る実技で、4人に異なるテーマを与えられて、私は手描き文字になりました。アルファベット26文字をその場で作るのは難しいので、8文字だけを現地で制作し、帰国後に残りを完成させて、データで送って講評してもらいました。それ以外は、タイプフェイス、タイポグラフィ、ダイアグラム、ブックデザインなどグラフィックデザインの講義を聞きました。講義は英語で受けました。最初は専門的な用語が多くて何を言っているか分からなかったりしましたが、耳で聴くだけの英語の授業ではなくて、自分の興味のある分野でしたし実物を目の前にして解説してもらったので、単語の意味が少し分からなくても、こういうことを言っているんだろうと想像しながら聴くことができました。ホテルに帰ってから、何を言っていたか調べて、英語の復習をしたりしました。また、資料が豊富で、日本では本の中でしか見たことがないようなデザインが原本であったり、すごく驚きました。活字を作るモノタイプ鋳造機が置かれていて、その職人さんに実演してもらう授業があり、こんな体験は人生で一度きりだろうって現地の先生から言われましたが、本当に来てよかったと思った瞬間でした。
プロジェクトを経て
今回のプロジェクトに参加して、本場の資料を間近に見ることができたことは貴重な経験でした。授業を受けたメンバーの国籍も様々だったので、日本の授業では聞くことができない、日本についてのイメージとか、タイポグラフィに対するそれぞれの国の考え方を感じ取ることができたのも大きかったです。また、イギリスは5日間で終わってしまったのですが、今年の5月にはムサビにレディング大学の先生が訪問教授としていらっしゃってタイプフェイスデザインの講座を開いてくれました。
学生国際交流企画は、例えば日本に来ている海外アーティストを大学に呼んでアーティスト・トークをしたいなど、学生が主体となって企画された国際交流のことです。その際に大学からは、交通費や宿泊費などの必要経費を補助する支援を受けられます(最大10万円)。一昨年から始まったグローバル人材育成事業の中で、学生国際交流企画への支援は3件から6件に倍増しました。
実施までの流れ
私が企画した内容は、ワークショップの実施と参加者制作物の展示です。 企画の背景として、異文化交流への興味や、自分自身の表現の可能性を探 ること、ワークショップの意義についての関心などがありました。そこで、 アーティストとして社会に何ができるのか、アートを介してどのような国際交流ができるのか、ワークショップを通じてできた制作物にどのような意味があるのかということについて考えることを企画の目的としました。 また参加者には、造形を介したコミュニケーションを通じて、文化や世代を超えて新たな関係を築き、イメージの伝達やその伝達の手法選択を経験することを目標にしてもらいました。次に、実施までの経過を説明します。 はじめに、小平市に小平市国際交流協会という組織があることを知り、連携を依頼しました。協会との連携が決まると、今度は企画を具体化してムサビの国際交流センターに提出し、助成が認可されることになりました。 プロジェクトをはじめるにあたり、すべてを一人で遂行することはできないので、武蔵野美術大学国際交流ワークショップ実行委員会という、この企画を実施するための団体を設立して協力者を募集し、準備を進めていき ました。
ワークショップから展示へ
ワークショップには、外国人を含む参加者11名とムサビの学生が参加しました。内容は、参加者がそれぞれの思い出のある物を持ち寄り、それらにまつわる思い出をペアに伝え、相手の思い出をコラージュにより表現するというものです。コミュニケーションや表現の際に生じるズレや共感が、異なる文化に対する気づきや、他者理解のきっかけとなりました。そして、ワークショップでの参加者の制作物を、小平市で20年ほど続く、外国人が出展する「こだいら国際交流芸術展」という展覧会において展示発表をし、来場者との意見交換の場としました。来場者数は延265名でした。
実施を経て
課題も多く見つかりました。例えば、目的意識を他のメンバーと共有することが難しかったことや参加者の募集をスムーズに行えなかったこと。また、この企画を今後どのように継続、発展させていくか、その方向性がまだ明確でないことなどです。しかし、それらは、実施して初めて見えてきた課題だといえますし、同時に有意義な経験にもなりました。私には、交換留学や海外のアートキャンプへの参加経験もありますが、草の根のような国際交流のカタチを発見、実現できたことが、今回の一番の収穫だといえます。まだ自分なりの国際交流に対する答えは出せていませんが、学生のうちにいろいろな経験をすることは、視野を広げ、今後の活動を考えるうえでも、とても意義のあることだと思います。では、なぜ学生のうちなのでしょうか? それは、ムサビという所属がある上で経験を積むことができるからです。今回の企画はムサビの学生を名乗ることで信頼を得て、比較的スムーズに地域や連携機関と関係を築くことができたともいえます。ですから、みなさんもムサビ生であるということを有効に活用し、ぜひ、社会というフィールドで自分を試すチャレンジをしてみてください。