Report File:2013.12
秋も深まる11月下旬、キャンパスのイチョウ並木も綺麗に色づいたお茶の水女子大学で、文部科学省グローバル人材育成推進事業の採択校(東日本第2ブロック)イベント「グローバル人材育成フォーラム」が実施されました。国際的な活躍を目指す学生たちの支援を目的とした本事業において、本校の学生たちも、「世界を変えるアイディア」のプレゼンテーションに登場し、美大ならではのパフォーマンスで会場を沸かせました。
経営者の視点から学生たちに刺激的な言葉を投げかけた日産自動車代表取締役副会長・志賀俊之氏の講演に続き、第二部では、8大学の学生による英語でのプレゼンが実施されました。「世界を変えるアイディア」をテーマに、異文化理解などの問題解決から、エネルギー自給や食の安全、SNSによる国際交流など、各大学が趣向を凝らしたプレゼンを披露しました。
本学の代表となったチーム「ネガポジ」は、第2ブロックからエントリーした13校から8校に見事選抜され、この日の最後のプレゼンターとして舞台に立ちました。2、3年生5人からなるこのチームは、この日発表した学校の中では唯一の女性のみの編成。メンバーは、リーダーの建築学科の西田早苗さん、油絵学科の諏訪葵さん、空間演出デザイン学科の櫻内彩美さん、視覚伝達デザイン学科の吉富ゆいさん、建築学科の一居萌美さんで、今年の夏休みに国際センターが企画した、英語でポートフォリオをプレゼンする3日間の講座「美大生のためのプレゼンテーション」英語プログラムに参加したことがきっかけで出会いました。
彼女たちは、国際化が進む今、子どもたちの国際感覚を育む方法として「ヴィジュアル・コミュニケーション・アート」を提案。言語を越えた視覚的な表現による交流を通じて、幼い頃から異文化を理解しようというものです。寸劇仕立てのスピーチの合間に、実際に幼稚園で行ったお絵描きのワークショップの映像を中継として挿入したり、最後には舞台に観客を上げ、舞台上で絵を描くといったパフォーマンスも行い、会場を沸かせました。講評でも、人を巻き込む演出が評価されるなど、彼女たち自身も美大らしいコミュニケーションで会場に想いを伝えました。
プレゼン後、彼女たちに今回の感想や彼女たち自身のグローバルな意識についてお聞きしました―
「会場の関係で当初予定していたアクションペインティングができなくなり悩みましたが、メンバーから違うアイディアが出て、みんなの力があってのプレゼンになりました。私は概念的な作品を作ることが多いのですが、説明をするのに日本語だと難しくなりがちです。英語など違う言語をツールとして物事を考え直すことで、自分の考えも明快になり、また、その元にある異文化を理解するのに役に立ちます。私は日本を出る気はあまりないのですが、そういうことがあるため、他の言語を学びたいという思いがあります」
「私は舞台美術を専攻したいと思っていますが、今回のプレゼンで寸劇をやることになり、演劇的な発想を活かすことができました。高校の時にも留学経験がありますが、来年、大学の交換留学制度を利用して、協定校のベルリン芸術大学へ半年間留学することになっています。舞台を観るのが好きなので、環境の違いによる思考やデザイン、考え方のプロセスなどを感じながら、自分の見識を広げ、アイディアを増やしてきたいと思っています。最近ドイツはかつてのアングラ劇のように、若者が自由に新しい演劇を小劇場で行っていて、そういうのを観るのも楽しみです」
「美大らしさ、私たちらしさを出せたらいいなって話していましたが、メンバーも建築や油絵、デザインとバラエティに富んでいるので、それぞれの得意分野を活かすことができ楽しかったです。私はアルファベットの書体をデザインしたいと思っていて、卒業後、イギリスの大学院に進学予定です。英語が言語として使われている国で生活し、その文化や歴史を踏まえて、自然と英語が自分の言葉として使うことができ、デザインを作れるようになりたいと思っています」
「みんなすごい忙しく、全員で集まることも難しい中で、できることをできる人がするという風に補い合いながら、進めてこれたのが今回の一番の意義でした。私たちのプレゼンが一番よかったと思いましたね(笑)。親の転勤でマレーシアに住んでいたことがあり、その時は多民族国家でいろんな国籍の友達がいました。それが楽しい思い出として残っています。私はおしゃべりが好きなので、いろんな国の人と話すのに、英語が話せればいいし、勉強しておいて損はないだろうと思っています」
「今回の大会は審査員の方もアート・デザイン関係の方ではなく、いつもと異なる環境で行われました。書類審査では、スケッチなどを添えることが出来ず、また日本語と英語での提出だったため、どのように表現すれば私たちの考えが伝わるかとひとつひとつの言葉遣いについて何度も話し合いました。また大学内外の方にアイディアと文章に対する意見をいただきました。言葉の表現を学ぶいい機会になったと思います。
小学生の時にホームステイを経験しましたが、簡単な英会話と絵とジェスチャーで意思の疎通を図った思い出があります。そんな発見が面白い一方、思う様に考えを伝えられないもどかしさもあり、英語を話せるようになりたいと思っていました。大学入学後、イギリスに語学留学に行き、異なる文化をもつ人々の考え方や価値観を知って、より多方面から自分を見つめ直すことができました。今はあらためて日本の文化に強い興味を持っています。課題などの制作を通して日本文化を見直しながら、今後の制作に生かしたいです」
■イベント情報
11月24日(日)
文部科学省グローバル人材育成推進事業の採択校(東日本第2ブロック)イベント
「グローバル人材育成フォーラム」
会場:お茶の水女子大学