Report File:2015.10
一昨年から始まった海外インターンシップ。卒業後の選択肢として海外での就職も視野に入れている学生にとって、労働環境や文化・生活の違いを肌で感じることができる貴重な機会です。2015年度は6名の学生がアメリカ・シアトルとベトナム・ホーチミンに7月27日から8月23日までの約1ヶ月滞在し、現地企業で研修を行ってきました。10月6日に実施された報告会では、インターンシップの様子やホームステイ先での出来事、休日の過ごし方など、それぞれが経験した“海外で働くこと”についてレポートされました。
海外インターンシッププログラムについて
一昨年(平成25年)からはじまった海外でのインターンシップは、全学科全学年の学生を対象に行っています。今年度はアメリカ(8カ所)とベトナム(5カ所)に研修先があり、 編集、WEBデザイン、ゲームデザイン、美術館ボランティアスタッフ、NPO映像スタッフ、シアタースタッフなどの職種がありました。現地ではホームステイ(アメリカのみ)をし、受け入れ先へと通うことになります。希望者は申込後に学内での適正審査を受け、語学力の確認や現地の情報など事前理解を深め、研修先の希望を聞いた上で語学力などを考慮し、調整することになります。実施は夏休みの4週間を予定。来年度の海外インターンシップを考えている学生は、キャリアチームまで問い合わせて下さい。
元教師の日本人が開設した私塾。現地の日本人や日米バイリンガルの子どもたちに理科の実験や日本語教育を行う。
小学校低学年から中学2年生までの子どもたちに実施される授業のアシスタントとして子どもたちの学びをサポートしました。研修中に実施されたサマーキャンプでは、河原の石を使い絵を描くプログラムを企画。研修先では日本語を使用し、英語を話す機会はホームステイしているイラン人家族と外出先のみでした。滞在中は、現地のアーティストやデザイナーの工房を訪問することができ、話を伺う機会もありました。また、デザインを学んでいるため、「Kids Academic Lab」の先生の知り合いの会社のロゴをデザインしました。休日にはシアトルからバスで3時間ほどのバンクーバーへ。関心のある欧米の教会を見ることができたのも貴重な体験でした。英語を話す機会は少なかったのですが伝えようとすればコミュニケーションには困りませんでした。文化の違いや考え方について学ぶことができました。
海外で働くことに興味があり、卒業後すぐではなく何年後かの転職を視野に入れています。そのときのために海外のことを知っておきたくてインターンに参加しました。昨年のKids Academic Labでのインターン生の様子を見ると、クラフトやイラストの制作をしていたので、私はイラストが得意なので活かせると思い研修先に申し込みをしました。回答の採点などの業務をはじめ講師として数学を教えました。サマーキャンプでは自主的に企画を考え、先生に提案。私は天体観測を担当したのですが、美大生らしい企画にしたいと思い、ちょうどペルセウス座流星群と重なったため、ペルセウス座の神話を紙芝居にして鑑賞の授業として展開しました。うまくいくか心配でしたが、子どもたちも集中して聞いてくれて、質問も受けました。インターン中によく指摘されたことに、社会人に必要な心遣いやコミュニケーションについてがあります。今まであまり考えることがなかったので今後は意識していきたいと思いました。
日米38,000社以上のドメイン管理でウェブ、Eメールのホスティング、データ管理などを手掛けるウェブ・サービスの企業。
昔から英語でのコミュニケーションに興味があり、デザインと英語を兼ねる仕事をしたいと考えています。研修先のPacific Software Publishing(PSP)は、半数が日本人ということもあり語学面でのハードルもちょうどよく、研修内容もウェブデザインだったため希望しました。PSPの方で私にあった業務を提案してくれ、既存のウェブサイトのロゴとサイト全体のユーザーインターフェイスのリデザインを任されました。最初の2週間をロゴ、残りをユーザーインターフェイスのデザインにあて、PSPのデザインチームに対して私のデザインをプレゼンをし、アドバイスを受けて作り直すという作業を行いました。チームのアドバイスが的確で参考になりました。シアトルは地下鉄がなくバス移動のため戸惑うことが多く、何度も乗り間違えてしまったのですが、現地の方が親切で、それがとても心強かったです。
今後、就職活動では海外で働くことも視野にいれたいと考えていて、大学を出た後に海外で就職する前に、一度研修という形で経験しておきたいと思いました。また今一番興味があるのがウェブデザインなので、それを現場で学べるというのはいい機会だと思い参加しました。私もPSPが運営するフォーム作成のウェブサイトのリデザインを行い、4週間でロゴとユーザーインターフェイスをデザインしました。PSPでは日本とは働くことに対する考え方の違いが実感できました。9時から17時までの労働時間になりますが、デザインチームの人たちは8時くらいには出社し、17時にはきっかり帰っていきます。残業する人はいませんし、時間内に仕事を終え、それ以外は自分の時間として使っていました。また、制作物に対して実際の現場の意見を聞くことができたのがよかったです。英語が十分に話せなくても顔の表情や身振り手振りで伝えられると思っていたのですが、最低限の語学力は必要だと実感しました。
オンラインゲーム、ソーシャルゲーム、スマートフォンサービス、書籍・雑誌等の企画・制作・販売をする企業。
発展する東南アジアを、今までとは異なるビジネスという視点で見ることができると思いホーチミンでのインターンを選びました。研修先のグレイトフルデイズはITベンチャー企業で、オンラインゲーム、ウェブ、モバイル、フリーペーパーという4つの事業部があり、私はオンラインゲーム事業部に配属されました。いろんな国籍の人がいる会社で、日本人、ベトナム人、韓国人、ブラジル人が働いています。私はアートディレクターを任され、企画会議の話をもとにデザインを考え、グラフィック・チームに伝えます。担当したオンラインゲームには週間イベントというものがあり、そのイベント用の新しいアイテムのデザインを手伝いました。最終週は9月のイベントのコンセプトの企画に携わり、メインビジュアルも作成しました。また、会社にはベトナム人の日本語通訳が何人かいたのですが、昼休みなどを利用して彼らに日本語を教えるという機会もありました。
全米に約390店舗を構える、世界最大規模のフェアトレード団体。
研修内容:対面研修によるコミュニケーションスキルの向上。商品管理、店舗管理。イベント補助。
Q 海外インターンシップに参加したきっかけを教えて下さい。
グローバルな時代になり、英語を使って働くことも求められると思い、また、アメリカのデザイナーがどのような教育を受けているのか知りたいという好奇心も強くありました。現地では実際にワシントン大学や美大なども訪問してみました。卒業後に海外へ行くときにどのような準備をすればよいか、また卒業後にすぐ行くことにどのようなリスクがあるかを調べるという意味合いもありました。
Q 研修先はフェアトレードで途上国の商品を販売する店舗でしたが、対面の接客などもあり語学に対する不安はありましたか?
相原 不安もありました。私が研修で行った「Ten Thousand Villages」は、英語使用頻度が最も高い研修先で、店舗で接客などもあるため、英語力が必要だと事前にわかっていました。準備もしていったのですが、スピードや発音の違いなどに戸惑うことがありました。
Q 「WALK」か「WORK」なのかも聞き取れないという報告もありました。事前にどのようなことを準備しましたか?
相原 大学でTOEIC-IPの試験を受けたり、自宅で接客英語を勉強しました。シアトルでも勉強は続けていましたね。
Q 接客だけでなく、自分の能力を活かしてデザインの仕事もされたそうですね。
相原 業務外の仕事だったので上司に直談判してポスターのデザインをさせてもらいました。でも制作の際も、細かい指示が聞き取れず、何度も聞き返してしまいました。そこでも最低限の英語は必要だと痛感しました。
Q 研修先の印象、雰囲気はどうでしたか?
相原 日本のほかの大学からもインターン生が来ていたので雰囲気もよく、英語が苦手でもお願いすれば何か仕事をやらせてくれるという感じでした。
Q 日本とアメリカの違いなど気がついたことはありますか?
相原 労働観ですね。金曜日は早く仕事を上がらせてくれたんです。週末だからって。残業とかもありませんし、そういうのは日本と違うのかなと思いました。
Q 帰ってきて何か変化はありましたか?
相原 行く前は、自分にあった職場を見つけるために海外も視野に入れたら、より選択肢が広がると思ったのですが、アメリカで現地の人たちがどんな暮らしをしているのかも知らなかったので、大学卒業後、すぐに海外で働くというのは難しいと思いました。インターンを経て、今はまずは日本でしっかり就職しようと考えています。英語の勉強にも力を入れていて、年内にTOEIC-IPを受けて、来年はTOEICを受けようと思っています。