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Report File:2016.06

05|11月24日(日)文部科学省グローバル人材育成推進事業採択校(東日本第2ブロック)イベント 会場:お茶の水女子大学「グローバル人材育成フォーラム」

この春、中国の浙江工商大学芸術設計学院、浙江大学城市学院、そして本学が参加し実施された「クリエイティブデザインキャンプ」。4月15日に本学で行われたキックオフイベント後、それぞれの大学がチームを編成し、各大学にて約7週間のデザインワークを経て、5月28日に中国・杭州でプレゼンテーションが行われました。
制作のテーマは「We:わたしたち」。発展するインターネット環境とともに変化する人間関係に対し、当事者でもある日本と中国の学生たち(つまり、わたしたち)が、新しいシステムとサービスを考え、提案しました。
この取組みについて、本学側の責任者を務めた工芸工業デザイン学科IDコースの中原俊三郎教授にお話しを伺いました。

クリエイティブデザインキャンプについて

アリババグループ(阿里巴巴集団)傘下のアントファイナンシャル(蚂蚁金服)の一員であるアリペイ(支付宝)が協賛するデザインプロジェクトワークショップ。第4回目となる今回の取組みは、アリペイ(支付宝)を筆頭にグループ企業が共同で参画し、国際デザインキャンプへと位置付けられ実施されました。中国の浙江工商大学芸術設計学院、浙江大学城市学院、そして本学の学生がそれぞれチームを組み、与えられたテーマ「We:わたしたち」をもとにデザインワークを行い、最終日にはプレゼンテーションを実施。優秀な提案が表彰されました。2016年4月15日、本学14号館において浙江工商大学芸術設計学院院長張建春教授や関係者が訪問しキックオフを行いました。(視覚伝達系の趙侃先生、産品設計系の周卿先生も同行しました。)

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本学14号館で行われたキックオフイベントの様子。学生さんたちと。後列右から1人目が中原教授、2人目が赵侃先生。後列左から1人目がアリペイの周マネージャー、2人目が張建春学院長。前列左から1人目が周卿先生

プロジェクトを行うきっかけ

今回帯同してくれた浙江工商大学芸術設計学院の周卿先生は私のゼミの修了生です。中国の大学を卒業後、ムサビの大学院に入学してきました。周卿先生は本学の協定校である中国美術学院の卒業生ということもあって、本学の卒業・修了制作展の視察で教員と学生約35名と同行し通訳として関わっていました。その周卿先生からの相談がきっかけで進んだプロジェクトでした。

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浙江工商大学とアリペイ、
そこにムサビの工芸工業デザイン学科IDコース

浙江工商大学は商業系の大学、アリペイは金融決済サービス領域での強みを持っています。同大学からはアリペイに就職する卒業生もいるなど、つながりがありプロジェクトが実現しました。今回、このテーマに工芸工業デザイン学科IDコースが参加することで、一見不思議に思う方もいるかもしれませんが、現在のID業界では、プロダクトデザインに加え、「かたちのないコトのデザイン」に拡大しています。つまり、モノではなくて、サービスなどをデザインするという領域にアプローチしている。だからよく考えると不思議なことではないんです。最近の動きを挙げれば、企業が海外にインフラ事業を輸出する際、例えば、新幹線を代表する高速車両では、システムや運営サービスの企画まで、トータルにデザイナーが事業にかかわるケースがあります。こういったことからしても、今回の取組みはIDコースにとっても非常に意義の大きいものでした。今後も継続して参加できればと思っています。来年は韓国の大学にも参加を呼び掛けるという話しがありました。日本・中国・韓国、この3か国でのプロジェクトが今後どのような可能性をみせるのか、非常に楽しみです。

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本番に向けての準備、学生さんの様子

先方のメンバーは2年生と3年生がメインで、こちらは4年生がメインでした。2人から3人を1チームとして活動を行いました。ムサビは4年生がメインということもあり、就職活動中の学生もかなりいて時間的な制約があって5月末の最終プレゼンには10名のメンバーのうち1名が残念ながら欠席。2名が最終プレゼンに間に合いましたが、1日遅れの到着でした。プレゼン当日までは、グーグルを経由して、アリペイのテレビ会議システムをインストールして打ち合わせを行いました。テレビ会議では先方は浙江工商大学外国語学部の生徒さんがサポートをしてくれ、こちらは大学院に在籍する留学生、王了一くんがサポートをしてくれました。先方のテレビ会議システムは画面にパワーポイントなどの資料が埋め込まれており、非常にスマートさを感じました。こちらは紙ベースのものをプロジェクターに映して紙芝居方式でしたね。

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プレゼンテーション当日

本学の4チームは、ファッション、食生活、寄附に関するサービスと決済システムの提案を行いました。ファッションをテーマとしたものは、通販で服を買う時にまるで試着して選んだかのようなコーディネートができるアプリの提案。しかも環境設定ができるので風が吹いたときの服の揺れ方までイメージできるような提案でした。次に食生活に関するものでは、学食利用や自炊の状況をアプリで管理することで、日替わり定食や最近の食事傾向から利用者にとっての最適な栄養管理を実現するというもの。もう一つの食生活の提案は、コンパや宴会等を企画する幹事をサポートする提案で、様々な条件に見合う会場や演出をアプリとともに決めて行きます。4つ目のテーマですけれども、寄附に関するものということで、思い立った時に自分の買い物金額に自分の決めた金額分を上乗せして寄附できるというサービスと決済システムの提案で、しかも寄附をした実感と貢献度が可視化されるというものでした。本学学生の提案は細かいところまで気がつくことができる、着眼点の良さが光っていたと思います。

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Aグループのプレゼンテーション資料

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Bグループのプレゼンテーション資料

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Cグループのプレゼンテーション資料

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Dグループのプレゼンテーション資料

今後へ向けて、さらなる可能性など

今回のプロジェクトについてアリペイのスタッフに伺ったところ、アプリについて若者の提案を見てみたい、というのが発端だったそうです。しかも日本人の若者が何を考えているかを知りたかったと。しかし驚いたのは、中国の若者の消費意欲の高さです。いろんな提案が出ていて、逆に中国の若者の価値観を知ることが出来ました。日本の大学として、ムサビとしてここに参加できたことは大変意義のあることだったと思います。語学力は当然大事だけれども、こういった取組みは、お互いの言語の壁を越えてやり取りをすることで学べることが多い。現在、様々な分野の仕事で「デザイン力」が必要とされています。今回のプロジェクトは学生にとって貴重な体験だったと思います。浙江工商大学は、キャリア教育に力を入れている総合大学です。そのスケールの大きさから、多角的な教育マネジメントは大変参考になります。今後も友好関係を深めていきたいと考えています。

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最優秀賞は本学チームが獲得 テーマは寄附「ほんの気持ち~買うことは伝えること~」右が松村碧さん、真中が吉尾佳穂さん

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最後に参加者全員で記念撮影

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